あいかわ公園 山野草図鑑

あいかわ公園で見られる様々な花たちを色ごとに紹介する図鑑です。(春132種 夏98種秋更新中)あいかわ公園で植物を見つけた際に花の色が分かれば、その色の図鑑を確認することで種類の特定ができます。スマートフォンなどで図鑑を見ながらお散歩することで、公園の自然をより楽しめます。花情報はどんどん追加していきますのでお楽しみに。

山野草図鑑 秋冬 白色の花

9月から見られる白色のお花をまとめています。写真が多いので容量などに注意です。

イタドリ
タデ科・在来種・可食)

場所:冒険広場上の道路
時期:9月上旬~
桜並木ほどの勢いはないもののあいかわ公園のイタドリは程よくしなだれることで白色のアーチを描いています。波のようにも見える大変綺麗な花なので、お花好きの方にはぜひ見て欲しい光景です。タデの仲間は写真のように細く伸びた枝に多数の花をつけるものが多いです。スカンポとも呼ばれ、昔から川沿いに住んでいるような人であればこの茎を剥いてかじったことがあるかもしれません。強い酸味があり、好きな人は好きな味です。

花は遠目から見ると茎にそのままついているように見えますが、よく見ると細長い筒のような姿をしています。花びらすべてが分かれずにくっつく合弁花(ごうべんか)と言う花の種類です。
右の写真は茎であり、これは細すぎますがもっと太めの物であれば皮をむいて料理などに使えます。フレンチでおなじみルバーブの仲間なので意外とおいしく料理できますよ。私はジャムを作ったことがありますが、見た目は茶色で最悪なものの、酸味と甘みがあり面白い味でした。

花期は9月頃で虫たちがよく集まります。




ヒヨドリジョウゴ
(ナス科・在来種・有毒)

場所:森のわたり橋など
時期:9月上旬~
林縁などで見られるつる性の植物で、独特な葉の形とフワフワの質感から非常にわかりやすい植物です。ナス科の自生植物は毒がある植物が多く、このヒヨドリジョウゴも毒を持っています。鳥のヒヨドリが名前に付けられていますが、特に好んで食べるわけではないようで、自然下に残されてることが多い印象です。花はバドミントンのシャトルのような形をしていますが、これはタイミングによってはしっかりと開いていたりします。ナスの仲間は白い花で5つに分かれる花を持つので覚えておくと役に立つと思います。

葉は見ての通りふさふさであり、葉の付け根の部分が左右両方に飛び出る独特な形をするものが多いです。しかし個体差も激しく、ものによっては付け根が両方ではなく右側だけ飛び出ていたりします。その辺の葉の多様性も含めて見分けやすい植物と言えます。秋終わりには赤い実をつけますが、それも毒なので食べないようにしましょう。




カラムシ
イラクサ科・在来種)

場所:日当たりのよい場所
時期:9月~
日当たりのよい場所で見られるカラムシは繊維が非常に丈夫なため、茎の繊維を利用して紙を作ったり織物に使われたりしていました。葉に触れるだけでも和紙のようなフワフワ感を味わうことができるため、非常に触り心地がいいです。花は毛虫のようにニョキニョキとたくさんつき、ブドウの房のようにたくさんつきます。写真をよく見ると白い線状の物が出ており、これはめしべです。カラムシは安全なもののイラクサ科の植物は針状のトゲを持つものがあり、刺さると酸の成分が注入されるため腫れるものもあります。あいかわ公園にはその植物はないので安心してください。

カラムシの花は草の上部だけでなく茎の途中からもたくさんつきます。写真はどちらも雌花(めばな)ですが、カラムシは上部に雌花を咲かせ、下部に雄花を咲かせるという面白い特徴があります。カラムシを見つけた時にはその花の違いを確認してみましょう。

5~7月にかけては美麗なラミーカミキリが高い頻度で見られます。



センニンソウ
キンポウゲ科・在来種・有毒)

場所:ふれあい広場の奥など
時期:9月上旬~中旬
他の植物に絡みながらたくさんの白い花を咲かせますが、うっかり触ったりしないように気をつけましょう。センニンソウを含めこのキンポウゲ科の仲間は毒を持つものが多いです。センニンソウの場合この草が持つ汁に触れるだけでもかぶれたりするとされているので気をつけましょう。キンポウゲの仲間は面白い花の特徴があり、花びらを持ちません。写真の白い部分はガクと呼ばれる部分で、葉が花のように変化したものです。

既にしおれかけではあるものの花のつくりを見てみると白い4枚のガクとそれが付いている茎をよく見ると何もないことが分かります。そして4枚のガクより内側にはもうおしべがついていますね。このように茎、花びらのようなもの、おしべと続く花はその花びらのように見えるものはガクが花びらの役割をしているものです。少し難しいかもしれませんね。




オオアレチノギク

(キク科・外来種

場所:パークセンター付近
時期:8月下旬~
日当たりのよい場所で普通に見られるオオアレチノギクは、芽生え時こそ小さいもののぐんぐんと背を伸ばし1m~2m程に成長します。花はかなり拡大して撮っていますが、小さな筒形の花で、これで満開状態です。キクの仲間は筒状花(とうじょうか)と言う細い線状の物を詰めたような花が見られるため覚えておくと役に立つと思います。写真のように花をすべて包み込む小さな粒状の部分を総苞(そうほう)と呼び、キク科のこの形の花によく見られます。
ヒメムカシヨモギと言う非常に似た植物がありますが、そちらは白い花びらの部分が飛び出して目立つので、花びらの具合に注目してみましょう。



クルマバザクロソウ

(ザクロソウ科・外来種

畑地などで普通に見られる花ですが、地面を這い葉が車の車輪のようにぐるっとつく特徴があります。花も同様にこの葉の付け根からぐるりと巻くように付く特徴があるためこの点から在来のザクロソウと見分けられます。ザクロソウの場合花をつける茎がかなり多く目立ちますよ。花びらは5枚でそれぞれバラバラに付く離弁花(りべんか)という花の付き方です。

5枚の花弁を持つためハコベなどを含むナデシコの仲間に非常に似ています。左がザクロソウ科で右はナデシコ科です。そっくりですね。しかしセンニンソウで話した花のつくりの部分が見分けるポイントです。右のナデシコの仲間は花弁の後ろに緑色のガクが付いています。ナデシコ科は花びらとガクを持つ植物なのです。一方ザクロソウの仲間はガクが花びらの代わりをしている植物なので、花の後ろに緑色の部分がありません。この点に注目してあげればばっちりですね。




ネナシカズラ

ヒルガオ科・在来種・寄生)

場所:石小屋ダム
時期:9月~
光合成をおこなわずに他の植物に絡みついて相手の茎を溶かし、そこから寄生根を差し込んで栄養を横取りする変わった植物です。葉緑素を持たない植物は写真のツルのように白色をしているものが多いです。大きく成長したものには葉がないものの、芽生え始めた時には葉が生えており、すぐ他植物から栄養を奪い取れないため自分自身で光合成をして栄養を作ります。外来種アメリネナシカズラがいますが、写真のとおり白い花が茎のような柄に付くという点から判断できます。

ネナシカズラは他の植物に絡みついた後にその植物とくっついている部分から茎の繊維を溶かす成分を出します。写真のように溶けたプラスチックの如くドロドロに溶けてしまうため、寄生された側の植物はかなりのダメージを受けてしまいます。多くのつる植物が日光を浴びるため、上を目指して登っていくのに対しネナシカズラは栄養を奪うためにつるを伸ばすので横に広がっていきます。




オトコエシ
スイカズラ科・在来種)

場所:石小屋ダム
時期:9月上旬~
初秋に白いお花を杯のようにつける姿が目立つ植物です。高さもかなり大きく、1m近くの大きさになります。スイカズラの仲間は5枚の花弁を持ち、散房花序(さんぼうかじょ)と言う花の付き方をします。これは花をよく見ると分かるのですが、花の下の方の柄程長くなり、上に行くにつれて短くなります。なので全体を見ると綺麗なブロッコリー状の姿に見えるというわけです。

葉の付き方は左右両方に葉を出す対生(たいせい)であり、葉の形もかなり独特です。根元の切れ込みがかなり目立つので分かりやすいですね。オトコエシとは見た目が丈夫なことを男に例えたものであり、雰囲気の柔らかいものをオミナエシと言います。
写真はありませんが園内にはメタリックに輝くハチ、セイボウの仲間がおり、この時期の白いお花に訪れていることがあります。



メドハギ
マメ科・在来種)

時期:9月~
場所:石小屋ダム
秋になるとやたらと目立つ草丈1m程になる豆の仲間で、河川沿いや開けた環境でよく見られます。すらっとした株たちから豪勢な花をつけるため、草自体の印象がかなり強く残る植物です。花は白色をベースとして虫へのアピールとして蜜のありかを示す紫色の部分があります。
株の印象を見るとマメっぽくはありませんが、例えば葉を見てみるとマメの仲間によく見られる3枚1組の葉をしていたりと種類を絞り込むのに役立つ情報が見られます。全体ではなくしっかりとポイントを押さえてみるようにしましょう。




ツルグミ

(グミ科)

時期10月頃
場所:南山
秋の林内で多数の細長い白い花をつけるため、とても目立つ植物です。秋咲きのグミの仲間は3種類ほどあるのですが、あいかわ公園ではツルグミとナワシログミの2種類が見られます。この2種類を見分けるポイントは花の時期であれば花の形と、葉の姿を確認しましょう。ツルグミは花の筒状の部分が細くなります。

葉の形にも注目してみましょう。ツルグミの葉は先端が細くとがります。そして裏側には褐色のうろこ状の毛が目立つため、茶色っぽい印象を受けます。
他の植物に垂れ下がって成長するのですが、それがつる植物のように見えるのです。
次のグミと比較してみましょう。



ナワシログミ
(グミ科)

時期10月頃
場所:石小屋ダムなど
秋に多数の花を咲かせ、蝶などの昆虫に大人気の花がこちらのナワシログミです。ツルグミと比べ、花の筒の部分が太く、花の先端と大きさが変わりません。また、写真に写っているようにトゲが大きく生える特徴もあります。このような下向きの花は、花にしっかりつかまれる昆虫たちに花粉を運んでもらっています。
花でも見分けられますが、葉の形でも見分けられます。

左が先のとがるツルグミで右が丸みを帯びるナワシログミです。裏側を見るとツルグミは茶色っぽくてナワシログミは白っぽいです。
可愛い名前の由来は、稲の準備をする頃に(4月5月)おいしそうな実をつけることにあります。



コウヤボウキ
(キク科)

時期11月~
場所:南山
南山登山道を進んでいると多数目にするのがこちらのコウヤボウキです。花の形から分かるようにほうきのような姿をしています。花が終わった後の綿毛の姿はまさにほうきのようで、とてもユニークな姿をしています。
こちらの花は筒状の花だけを持つキクの仲間で、イソギンチャクのように見えます。
この花にはおしべが目立つ時期とめしべが目立つ時期があります。まず雄しべを出すことで、自分の花粉で受粉してしまうことを避ける植物の戦略の1つです。写真では花粉を出す時期が終わり、ちょうど移行している時期です。。この後、受粉する器官が発達します。花の中に赤くて目立つものがあります。よく見るとこの先が開いていますね。ここから受粉する器官(花柱)が伸びてきます。


カシワバハグマ
(キク科)

時期:10月頃
場所:南山
南山の薄暗い場所で見られ、コウヤボウキを立派にしたような印象を受ける植物です。写真は花後で、本来はとても鮮やかです。キクの仲間には花を根元から支える総苞(そうほう)があるのですが、コウヤボウキとカシワバハグマはこの部分が鱗のようにとても目立ちます。2種は花の形だけを見てしまえば似ていますが、葉の形が違います。

名前にカシワとあるように、柏もちを包む葉になんとなく葉の形が似ていることからカシワバの名前が付けられています。写真左はカシワではありませんが、カシワの仲間の葉です。右がカシワバハグマの葉です。切れ込みの雰囲気がそれとなく似ていますね。コウヤボウキはこのような草ではなく、1m程の低木になるのでその辺でも見分けられます。



マツカゼソウ
(ミカン科)

時期:9月10月
場所:南山、森のわたり橋奥
花も少なくなる季節の林床を白くにぎやかに飾ってくれるのがこちらのマツカゼソウです。こう見えてミカンの仲間であるため、葉をちぎるとミカン科の香りがします。しかし香りはミカンの仲間の青臭さを濃縮したようなものになっており、とても強烈です。この特徴のためかシカの食害にあいにくい印象を受けます。水分が豊富な場所を好むようで、沢筋のような場所でよく見られます。マツカゼソウは葉にも特徴があります。

丸い切れ込みが多数入っているように見えます。このようにたくさんの葉が枝分かれしているものを複葉と言います。

山野草図鑑 秋 赤色の花

9月以降に見られる赤色の花を紹介していきます。写真量が多いです。


アレチヌスビトハギ
マメ科外来種
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場所:ふれあい広場の奥など
時期:8月下旬~9月中旬
マメ科らしい大きな旗状の花びら一枚と、細く突き出た花びらからなります。荒れ地の名の通り乾燥した場所や林の縁などでよく見られ、花と種を多数つけます。突き出た花びらは虫などが乗るとめくれ、中から雄しべが顔を出します。他の花と異なり、めくれて出る関係から雄しべがまとまっています。

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左はくっついているおしべで、花びらがめくれた時に虫の腹側に花粉をまとめてつける戦略のため一カ所にまとまって付いています。花びらについている黄緑色の目玉模様は虫に蜜のありかを示す模様であり、虫に花粉を運んでもらうタイプの花ではこのような模様が見られます。右は種の写真でこのヌスビトハギの仲間は動物などの毛にくっついて移動するため、服などの繊維に張り付きます。引っ付き虫として遊べます。




ヌスビトハギ

マメ科・在来種)
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場所:ふれあい広場の奥など
時期:9月上旬~
数mm程度の白と鮮やかなピンク色の花を穂のように多数つけ、ピンクの枝のように見えるとても綺麗な花です。小さいですがしっかりとマメ科の花の形をしています。つる性が多いマメ科ですがヌスビトハギは普通の草で、この穂のような部分がにょきにょきと伸び、長いものでは1mにも届きます。
名前の由来はその種にあります。
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アレチヌスビトハギが3~6個とランダムに付くのに対してヌスビトハギは2つ付きます。このタネの形が物を盗んだ泥棒が抜き足差し足と密やかに帰るときの足の形に見えることから名付けられました。同じく動物に張り付くため夜に盗みに入った人に張り付くという意味にもとらえられます。ちゃんと鞘もついていて豆です。



ヤブマメ
マメ科・在来・つる性)
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場所:ふれあい広場の奥など
時期:9月上旬~
フェンスや林の他の植物によく絡みついているマメ科の植物で、少し長さのあるマメ科の花をつけます。花は白色と淡い紫が目立ち、一カ所にまとめて付くというのを繰り返します。豆らしい豆をつけ、地下にもできる豆は食べることもできるそうですが、私は食べたことがありません。
つる性の野生豆は種類が多く、見比べてみないと分かりません。
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ヤブマメの場合は葉に丸みがあり、しわが多い点が挙げられます。3枚の葉はマメ科ではよく見られるので、枚数ではなく葉先がとがるかどうかやしわ、形に注目してみると見分けやすくなるでしょう。豆や花の色も種類によって違います。形が少し似ているトキリマメなどは花が黄色ですよ。



ネコハギ
マメ科・在来種)
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場所:冒険広場上の道路、石小屋ダム
時期:9月上旬~
日当たりのよい場所などで見られるマメ科の仲間で、秋によく見られる萩の仲間は上を目指して伸びていくものが多いのですが、このネコハギは地面を這うという面白い特徴があります。葉も3枚の綺麗な円形からなり、草全体を通して白い毛が生えるなどの特徴から豆の仲間の中でも分かりやすい部類です。このような生え方からまるで緑の絨毯のように生えていることもあります。
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花は極小ですが花付きは良いようです。極小であってもしっかりとマメ科の基本的な形をしていることが分かります。これまでの種類を見てもお分かりの通り、野外でこのような2枚の花弁を持つ花を見つけたら豆の仲間です。花、豆、葉などを記録しておけば種類の特定は簡単ですよ。



キツネノマゴ
(キツネノマゴ科・在来種)
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場所:ふれあい広場の奥など
時期:8月中旬~
舌をべろりと出したような姿が印象的な秋によく見られるピンク色の花を持ちます。キツネノマゴの仲間は種類が少なく、身近では2種類ほどしか見られません。大きな舌状の花びらは虫が乗るための足場でもあります。虫に花粉を運んでもらうお花なので花弁を見てみると白い模様が入っています。それが虫への蜜のありかを教える模様の役割を持っています。
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塔のように突き出た苞(ほう)が目立つ植物でもあります。苞やガクは難しい用語ですが、花びらを外側から支えるのがガク、花びらとガクを外側から支えるのが苞とイメージすると掴みやすいかと思われます。これから冬に向けて1つから2つの花をぽつぽつと咲かせ続けます。




メハジキ

(シソ科・在来種)
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場所:石小屋ダム
時期:8月~9月下旬
石小屋ダム方面で見事に咲き乱れる紫の花がこのメハジキです。葉っぱがあちこちに弾けるように付いており、1m近くある草丈も相まってまるで紫色の壁のように立ちはだかります。これほどの群落はなかなか見られないため、8月頭辺りの時期に一度見てみることをお勧めします。シソ科植物のため花弁は上と下1枚ずつからなり、このような花はハチの仲間が花粉を運ぶのに大きな役割をはたしています。
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メハジキの花はこれぞシソ科の花と言う感じで、写真上部の花びらに点のように張り付いた花粉が付いています。花の蜜を吸おうと思ったクマバチなどの大型のハチが下の花びらに止まると花びらがその重さでびよーんと垂れて虫の背中に花粉をつけるという戦略です。二唇形(にしんけい)という形を覚えておけばシソの仲間は分かりやすいですよ。


カワミドリ
(シソ科・在来種)
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場所:石小屋ダム
時期:9月~
石小屋ダムでメハジキとともにたくさん生えている明るい紫色の花はこちらのカワミドリです。シソ科の中でもかなり強い香りを持ち、ハーブティを飲んだことがある方であれば馴染みのある香りだと思います。花を見つけたら葉をちぎって香りを嗅いでみましょう。花と葉にもかなり特徴が見られます。

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花からはおしべが飛び出しています。めしべも同じく飛び出しており、その先端が3つに分かれています。花が終わっても残された部分が紫色をしており、花の時期にはしおれた花があっても紫色に見えます。葉の裏にはスポンジのようなぶつぶつがあります。これは腺点(せんてん)といい、香りの成分を蓄えている場所です。葉を破ったり、虫がかじったりするとここから香り成分が飛びます。香りの強い植物に見られます。



タツナミソウの仲間
(シソ科・在来種)
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場所:南山入口付近
時期:10月頃
あいかわ公園内ではオカタツナミソウがとてもたくさん見られます。そことは別の南山入口付近に季節外れではあるものの小柄のタツナミソウの仲間が咲いていいました。この仲間は種類がたくさんあるため、タツナミソウの仲間とします。見分け方には花が上部にまとまって生えるか、階段のように段階的に付くかと言ったポイントや、花の紫色の濃さ、茎に付く毛が上を向くか下を向くかなど様々あります。
興味のある方は実物を見てみるのも面白いと思います。園内では数は多くないもののぽつりぽつりとタツナミソウの仲間が見られます。





ヤマクルマバナ
(シソ科・在来種)
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場所:石小屋ダム方面
時期:9月~
立ち上がる茎と、そこから白い小さな花を多数つけるシソ科の植物です。クルマバナの仲間は花の雰囲気だけを見ると似た姿の物が多く、見分けにくいです。特に類似のクルマバナとは花の色が白色ならヤマクルマバナと分かります。イヌトウバナと言う似た花もありますが葉に丸みがあるヤマクルマバナと先端に向けて細くなるイヌトウバナと見分けます。似た花が多く、種類を特定するのが難しい種類です。



ホトケノザ

(シソ科)
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場所:園内各所
時期:通年
赤い花をニョキりと立ち上がらせるシソ科らしい可愛い花です。シソの仲間は立ち上がっている細い筒の部分の根元に蜜を蓄えているため、虫たちを大きく開いた顎のような部分の下側にのせようとします。てこの原理で花が垂れ下がり、上あごに付いた花粉を虫の背中に付けるのですね。ホトケノザは名前の通りこの座布団のような大きな葉を仏様が座る場所に見立てています。この花の面白い所は閉鎖花(へいさか)を作ることにあります。
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身近な植物ではスミレの仲間にも見られるのですが、閉鎖の名前の通り開くことなく自らで受粉して種を作ります。クローンのようなものですね。
開く花は新しい遺伝子を作り多様性を広げ、閉鎖花では自らの数を増やすといった感じです。不思議な世界ですね。



ウリクサ
アゼナ科・在来種)
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場所:ふれあい広場など
時期:8月~
地表付近で多数の小さな紫色の花を咲かせます。花の大きさは5mmほどで非常に小さいので、意識的に探さないと見つけられません。花をつける茎をグイっと伸ばして咲かせるため、注意を払いながら探してみればすぐに見つかります。アゼナの仲間は乾燥した場所というよりも湿地環境でよく見られる仲間なので馴染みがないかもしれません。ウリクサは同じ仲間のアゼナととても似ていますが、ウリクサの葉の端にはギザギザ状になっているため見分けられます。



ママコノシリヌグイ
タデ科・在来種)
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場所:石小屋ダム
時期:8月~
湿った環境でよく見られる鋭いトゲを持った植物です。タデの仲間の花は紙風船を膨らませたかのように根元がくっついたまま袋のように広がります。(合弁花)勢いよく触れると刺さる位のトゲを持ち、茎に対して下向きについています。これを利用して他の植物にもたれかかり、倒れないようにしています。
同じようなタデの仲間ではトゲを持つものが見られるのですが、葉の形を見ることで種類を見分けられます。


イヌタデ
タデ科・在来種)
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場所:花の斜面
時期:6月~
湿った環境や畑のような場所で見られるタデの仲間です。エノコログサ(ねこじゃらし)のように穂のような姿になり、先ほどのママコノシリヌグイのように紙風船状の花を咲かせます。イヌタデと同じ形をした花は非常に多く、外来種を含めて判断が難しいのでイヌタデ(仮定)ですが、見るべきポイントは草丈、花の色、そして茎を包み込む部分です(葉鞘(ようしょう))
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イヌタデはこの茎を包み込んでいる部分の先端を見てみると細長いひも状のものが飛び出ています。花が赤紫色で草丈が50cm程度、付け根の部分がひも状に飛び出ていればイヌタデの可能性が高いです。 逆に言えば背丈が1m近くなっていたり、白色と赤紫色が見られたりしたらそれは外来種タデ科の仲間の可能性が高いです。



サザンカ
(ツバキ科)
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場所:南駐車場
時期:11月~2月
南駐車場で明るく目立つのがこのサザンカです。花はツバキそっくりですが明確な見分け方があります。特に花の咲いている時期であれば簡単に見分けることができます。花が落ちた後に注目してみましょう。
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サザンカは写真のように花弁が一枚一枚落ちる特徴があります。花の時期であれば触れたりしても大丈夫なのですが、春から夏にかけてはチャドクガと言う毒を持ったやっかいな毛虫が好む木でもあるため、それらの時期には気をつけましょう。

植物の葉の形(コラム)

ここでは、複雑に見える植物をより分かりやすく知るためにあいかわ公園の植物写真とともに見るべきポイントをご紹介します。色々な植物に興味がわいてきた方はぜひこれから紹介するポイントにも目を向けて花以外の観察にも挑戦してみてください。
葉の付き方


互生(互い違いに付く)
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葉を見つけたらその葉が付いている柄の部分を見てみましょう。右左右左と順番についていれば互生(ごせい)という生え方です。
多くの植物は互生で葉をつけるため、普通に見られる付き方と言えます。
ふれあい広場の木も多くが互生です。
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カブトムシの木コナラも互生に葉をつけます。


対生(左右同時に葉をつける)
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葉の付く柄の部分を付け根まで見て、そこから左右両方に葉が出ていれば対生(たいせい)という生え方です。互生に比べると対生の葉は数も少なく、種類を判断するポイントになります。スイカズラ科やカエデ科などは対生の葉が多いため、このポイントに注目することでそれらの種類を見分けやすくなります。
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紅葉が綺麗なモミジたちはカエデ科に所属し、対生であることが分かります。


複葉(複数の葉をつける)
葉の軸から複数の葉が出ているものを複葉(ふくよう)と呼びます。
三出複葉(さんしゅつふくよう)
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互生や対生で確認した葉の付く柄がありました。この柄から3枚の葉をつけるのが三出複葉(さんしゅつふくよう)です。
写真のシロツメクサの中心となる軸は3枚の葉の根元、すなわち中心です。この葉の付き方も特徴あるものが多く、これによって見分けられる種類も多いです。
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木に絡みつく有毒な植物ツタウルシも1つの柄から3枚の葉が出ていることが分かります。写真の葉を見てみると全て3枚で1セットになっているのが分かりますね。複葉は1つの柄から葉の枚数を数えますので写真のツタウルシの葉(写真中央)は1枚となります。これが難しいポイントです。


羽状複葉
三出複葉の葉の枚数をさらに増やしたのが羽状複葉(うじょうふくよう)です。1枚の葉が羽のように分裂します。
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風の子橋にあるオニグルミが代表的です。
やはり葉の確認には柄が大切です。写真の葉の柄は左上から伸びているのが分かりますね。つまりツタウルシなどと同様に1つの根元を中心に、多数の葉が羽のようにくっついているのです。写真の葉っぱは10枚程の葉ではなく1枚の葉ととらえることになります。イメージが難しい方は葉から全体を想像するのではなく柄から葉を想像してみてください。
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多くの方は葉とはこのような絵を想像すると思います。このイメージがまさに正解なのですが言うならば1つの柄とそれに付くものを葉と呼びます。つまり
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羽状複葉と言うのはこのように1つの柄に対して複数の葉が付いている状態なのです。このように見てみると羽状複葉が1つの葉であるという点もわかりやすくなりませんか?



羽状複葉の種類
羽状複葉には種類があります。さらに詳しくみてみましょう。
奇数羽状複葉
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葉の付き方の中でも複葉の先端の形に注目します。写真中央下の部分ですね。複葉の先端の形が三出複葉のように3枚の葉になっています。このように複葉の頂点に飛び出る1枚の葉を持つものが奇数羽状複葉(きすううじょうふくよう)です。頂点が1つだけで奇数となるためこのように名付けられます。最もよく見られる羽状複葉の形で、ほとんどがこれに該当します。森のわたり橋付近のナナカマドや、写真のキハダなど。


偶数羽状複葉

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羽状複葉の先端に注目(写真下側)してみると奇数とは異なり、先端に小葉が付いていないことが分かります。対生のように両手に分かれていますね。このように先端が左右両方に枝分かれする羽状複葉を偶数羽状複葉と呼びます。これはかなり限られた種類に見られる形で、種類の特定が可能です。
マメ科に見られ、身近な種類ではネムノキかジャケツイバラかあると思います。公園周辺では5月頃に黄色く木を染めるジャケツイバラがたくさん見られますよ。f:id:aikawa_park:20200523105855p:plain



輪生(りんせい)
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輪生は名の通り輪のように葉をつけます。3枚以上の葉が、同じ高さの柄から出ていることが当てはめられる条件です。
写真は春の人気者ヒトリシズカですが、ここでは葉の形に注目してみましょう。それぞれの葉の柄が茎に伸びて同じ高さでまとまっています。茎に対して輪に付くので3出複葉とは違います。(3出複葉は一つの柄に3枚の葉が付く)
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大きな大きなホオノキの葉も輪生です(厳密には少しずれている)それぞれの葉の柄を見ると特定の一カ所から出ているのが分かりますね。輪生の植物もまた数が多くない種類なので葉の付き方が分かると種類を特定できることが多いです。